■ SSDの速度の秘密
別に秘密でも何でもありませんが、SSDの中には NANDフラッシュメモリだけが入っているわけではありません。
□ コントローラーチップ
SSDの性能と寿命を制御する、一番大切な部品と言って良いでしょう。コントローラーの進化が MLCフラッシュメモリの進化を支えています。
ウェアレベリングや読込、書込みの並列化、書き込み回数の上限の管理などを行っています。
Marvell社(Crucial, Intel)や SandForce社(Vertex)などが有名です。
尚、Crucialは Micron Technology社の SSD製造販売の子会社ですが、Micron Technologyと Intelが共同で設立した IM Technology社で製造された NANDフラッシュメモリを使用しています。つまり、Crucialと Intelが使っている技術は、コントローラーチップもNANDフラッシュメモリも同じものとなります。
※ Intelは以前は自前のコントローラーを使っていましたが、最新の510シリーズではMarvell社のコントローラーを使用しています。
□ キャッシュメモリ
16~64MB程度のDRAMを搭載して、読み書き性能を上げるために使っています。後のSSDの特性のところで述べますが、書込みをするために必須のパーツです。IO性能のパフォーマンスアップにも効いてきます。
□ NANDフラッシュメモリ
フラッシュメモリそのものです。最近は 25nmプロセスを使った製品も出ており、高速化、大容量化に寄与しています。
■ フラッシュメモリ SSDの特性を理解する
□ 消費電力
フラッシュメモリは消費電力が桁違いに小さくできています。容量辺りの消費電力を考えると MLCが有利です。
通常の 3.5" HDDが10w前後ですが、SSDの場合アイドル時 1W以下、リード値2W程度です。
□ 書込みがだんだん遅くなるのは何故?
フラッシュメモリの特性として、メモリにデータが書き込まれていると上書きでの書込みは出来ません。従って使い始めのデータが空っぽの時は良いのですが、だんだんデータが書き込まれてくると、データの消去+データの書込みの2つの動作を行う必要があるため、だんだん書込みに時間がかかるようになることになります。ちなみにデータの消去には書き込み処理の100倍くらいの時間がかかります。またデータの読み書きの単位は2~4KB程度ですが、データを消去する場合は例えば 128KB単位で行われます。ですので 1バイトの書き換えでも 128KBの消去と書込みが必要になります。そのために SSDには DRAMのキャッシュメモリが積まれており、上記1バイトの書き換えは次のようなステップで行われます。
128KBのフラッシュメモリ上のデータを DRAMにコピー (読込が 32~64回)
フラッシュメモリ上のデータの消去
DRAM上の1バイトの書き換え
128KBのデータの書き戻し (書込みが 32~64回)
これらの動作を改善するために TRIM機能が使われます。最近は TRIM機能をサポートするSSDが多く出てきています。
□ MLCの寿命は?
SLCの10分の1から 20分の1と書きましたが、実際はどれくらいあるのでしょうか。
Crucialの c300を例にとると書込み上限は 72TBでした。これは毎日 40GBの書込みをして上限に達するまで 5年間かかる大きさなのですが、DBの OLTP部分など更新の激しいデータを格納するとなると、かなり足りないかな というサイズです。
□ MLCのMTBFは?
Crucialの c300で MTBFは 200万時間でした。
HDDよりもかなり良い値なのではないでしょうか。(可動部が無いので当たり前ですが)
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ここまで SSDの種類や特性などについて見てきましたが、結論としては MLCを使用した安価なSSDでもコントローラー機能の向上により、性能・寿命が著しく伸びています。使い方をきちんと考えて使う分にはエンタープライズ用途でも十分使えるレベルになってきていると言えます。
例えばDWHで使用するデータは、SSDに向いていると言えます。
- データ書込みは追記書込みが主で、後は読み出しだけ。
- 過去数年の巨大なデータを使用するが、分析するときは大量のデータに高速にアクセスが必要。
ここまで見てきたように、SSDの容量と価格は急激なスピードで進化しています。今1,000万円を出して必要な容量を確保するより、今は 500万円で直近必要な分のSSD容量をそろえ、来年もう500万円出してSSDだけを追加するとなると、同じ金額でも高速・大容量のストレージを手に入れることが出来ます。
p.s.
SSDは HDDと同じくコントローラーのファームウェアアップデートがあります。不具合修正はもちろん、性能アップしたり省電力になったりするので、時々ホームページをチェックしましょう。